食事 欧米化 危険性 は警告されていた 医学の進歩は病気を抑えていないという現実があります。医療がこんなに進歩したのに、病気や不快な症状が増えているのはなぜでしょう?ガンにかかる人も2人に1人の時代になってしまいました。糖尿病も国民病と呼ばれ、珍しい病気ではなくなってしまいました。予備軍を含めてどんどん増えています。
これらは、戦後の食の欧米化が大きく影響していると報じられています。結局、日本人のDNAに脂肪や糖質が合っていないということです。当然、過剰摂取は欧米人の病気の原因にもなります。
食事 欧米化 危険性
食の欧米化は本当に日本人の腸ストレスを増大させてしまったのか?
食の欧米化が腸のストレスを増大させて、ガンや生活習慣病が増えてしまったことは今日のガンや生活習慣病の増加につながっているように思います。
20~30年ばかりの間の、日本での状況の変化を大きな視点からざっと見ておくことにしましょう。まず初めにきわめて象徴的な光景を2つあります。
長寿学のパイオニア近藤正二博士(故人、東北大学名誉教授)がかつてハワイを訪れた時、現地の日系人一世から「不思議な」現象についての解明を依頼されました。
それは一世たちが70代、80代でも元気なのに40代、50代の二世たちが親より先に早死にしているという「奇怪で不可思議な」現象」でした。
一世たちは何かのたたりかと不思議がり気味悪がっていました。博士は日系人家庭を訪ね、同じ食卓について一緒に食事もして観察しました。そしてわかったことは、一世たちは肉を少しは食べても野菜を沢山食べるのに、二世たちはほとんど野菜を食べないことでした。
同じ一家の食卓なのにそうした状況でした。博士は二世たちに「もっと野菜を食べたらどうだ」と忠告しました。すると二世はこう答えました。
「あんなものは土人の食うものです。ここでも島の土人たちは食べています」一世は故国以来の日本型食生活だったのに、二世はすっかり食事を欧米化させ、その結果として心臓病その他の欧米的な病気で早死にしていたのでした。
博士は自分が数十年かけて足で調べ上げた日本の長寿村、短命村の比較調査と合わせ、ハワイの二世たちの実例も挙げて、当時食事欧米化の傾向をたどり始めていた本土の日本人にも食事欧米化の危険を警告しました。しかし博士の警告は聞く耳を持つ人がないままに、わが国の食事が欧米化の一途をたどってきたのです。そしてその結果として、手遅れ行政で有名なわが厚生労働省さえ、前述の「指針」を出さざるを得ないほどの状況になったという結果です。
かつてのハワイで起きたのと全く同じ現象は、時計の針の若干のずれの後いまの日本本土で起きている現象です。そのうちでももっとも象徴的なケースの1つは、かつての長寿村での「逆さ仏」です。
かつての長寿村でも「逆さ仏」現象
昭和60年に何年ぶりかで長寿村として知られてきた桐原(山梨県北都留郡上野原町を訪ね、「桐原はもう長寿村ではない、消えた長寿村だ」というレポートがありましあた。
私はその7年ほど前にはここを「消えてゆく長寿村」と書かれたもがありました、それをこんどは「消えた長寿村」に変わっているのです。
食事の変化の波はこんな山間の小部落にもいよいよ強くなって、その結果が目に見える形ではっきり現われるのがますます目立ってきていたからです。
「消えた長寿村」というレポートにはこのように書かれています。この部落では近藤博士がハワイの日系人について報告したのと同じ現象が、かつて長寿村だっただけに一層きわ立って見えます。100歳の祖母も80歳の親も元気なのに息子は50代で死んでいるとか、90代の母親が欧米型脳卒中で寝たきりの60代の息子の面倒を見ているとか、50代の嫁が死に90代の母親が主婦として一家を切り回しているとかいった家が沢山あるのです。
この村ではこれを逆さ仏現象といっているのですが、そんな例がかつての長寿村だけにとくに目立っていました。この村にはいまでも80代、90代の現役の農夫や主婦がいて、さすがかつての長寿村と思わせるものです。しかし、その後継ぎたちは逆さ仏で親や祖父母より先に死んでいて後継者がいないのだからもう「消えた長寿村」と言われるのも無理がありません。
桐原を40年来追跡してきたチームは、昭和元年から58年までのこの村での三3000人の死亡届を分析して死因の変化を調べました。
この村ではかつては老衰(90代、100代での自然死)が断然多く、昭和30年代でも死因のトップでした。しかし、昭和50年代では老衰は10% 以下で、桐原での三大死因も脳卒中、心臓病、ガンと、日本全国と変わらなくなっていたのです。
世界に例のない中年死の急増からの教え
昭和56年頃に大きな話題になったのは、大久保正一博士(当時日大教授、人口問題が専門の統計学者)が発表した1つの統計でした。
これは当時の40代後半から50代初めの死亡率がそれより年長の世代より高く、異常で不自然だというものでした。そしてそうなっている大きな原因は血管病(欧米型脳卒中や心臓病といった欧米型の血管病)と指摘されました。
博士の統計はいうまでもなく日本全国を対象にしたものでした。博士がこの統計を国際学会で発表したところ、各国の学者からそんな例は世界中に前代未聞だと不思議がられました。こういう不思議な現象(これも確かに逆さ仏現象の1つである)が日本だけに起きた理由は見当がつきます。それは食事欧米化の波を日本がもっとも短期間のうちにかぶり、この世代頃から激しくその波に溺れ、しかもこの年代になってその結果が表面化したからです。
しかし、いまはまだ死亡統討という形で表面化はしていないのですが、現在の子どもたちはもっと早い時期へ30代後半から40代前半)に血管病でばたばた死ぬだろうと予測させる調査さえあるのです。
ハワイの日本人会が経営しているホノルルのクアキニ病院や広島で1960年代に行なわれた調査は、われわれに教える所が多数あります。それはハワイの日系人も食事の欧米化につれて1世より2世、3世と病気が欧米的なものになっていくのをよく教えているからです。
移住者の病気の変化が教える食べものと病気の関係
1960年のハワイの日系人の脳出血の死亡率は人口10万人当たり62.7で、ハワイ白人の44.7よりずっと高く、日本型を示していました。
脳出血の死亡者は年齢が高く1世が多いからです。1958~67年の間にクアキニ病院で行なわれた日系人875人の解剖例では、脳卒中の中でも脳出血62人、脳梗塞38人で脳出血のほうが多かったのです。
また膀胱ガンも日系人は白人に比べて男で2.6倍、女で2.9倍でした。そしてこれは高齢者に多いガンでした。ところが心筋梗塞、乳ガン、大腸ガンなど、欧米的な病気が本土日本人より多くなっていくのです。
1960年に広島でリッカートという外人医師が行なった日本人の解剖例と比べ、クアキニ病院でのハワイの日系人の解剖では、心筋梗塞の死亡者は率で5倍以上でした。広島では全解剖例の3.4% だったのにハワイでは18%でした。
乳ガンは白人女性並みに多くなるでしょう。いまはともかく50年代、60年代の日本は世界的にも乳ガンの少ない国でした。それなのに当時すでにハワイの日系人女性では白人並みに多くなっていました。そして39歳以下の若い女性では完全に白人と同じ死亡率でした。こんなことから、彼女らはみな二世、三世だとこの調査はいっています。
大腸ガンについては、それはハワイの日系人のかつての胃ガンにとって代わりました。クアキニ病院に入院した日系人で一番多いガンは、大腸ガンになったのです。この他、前立腺や肺ガンといった欧米的なガンもハワイの日系人には多くなっていました。
リンパ組織にできる腫瘍リンパ腫でも本土の日本人にはホジキン病(首のリンパ節に最初に腫瘍ができるリンパ腫) は10% そこそこなのに、ハワイの日系人は32% がこれだといったことなどもこの調査でわかります。この調査はハワイの日系人二世の病気がいかに欧米的なものになっていったかをよく示しています。また「広島での1960年(昭和35年)の心筋梗塞の死亡者が全死亡者(ただし解剖例を全死亡者と仮にみなす)中の3.4%、ハワイの日経人は、18%でした。同じ脳卒中でも日本型脳卒中の脳出血のほうが脳梗塞より当時の日本人にはまだ多かった」という指摘もありました。
そこで、これといまの日本を比較してみましょう。すると心筋梗塞死は目立って増えているし、また脳梗塞の死亡者は8万7153人で、脳出血の32025人(いずれもデータは平成11年)より多いというのがいまの日本です。大ざっばにいって、いまのわが国はハワイを通りこしてアメリカ本土に近づいているようなものです。
近藤博士が嘆いた頃より現状はもっとひどいことになっているのです。またこの調査は二世女性たちの乳ガンの多さも指摘していました。そしていまのわが国ではこれも急増が目立つだけでなく、その若年化が目立っている病気です。
トロウエル博士は、昔は糖尿病のなかったアフリカでも六、70年代には大都市に大きな糖尿病専門病院ができ、太った黒人たちが街に目立つようになりました。アフリカの大都市に起きた現象はそのまま日本全土にいま起きているのです。欧米的な病気の増加ぶりを主な病気だけに限ってざっと見てもつぎのようになっています。
大腸、食道、肝臓、膵臓、前立腺のガンが目立ってきた
心臓病のうち動脈硬化、つまりコレステロール、動物性脂肪の多さが基因になって起きる虚血性心臓病の死亡者数は昭和25年当時8272人だったのが15079人(平成11年)と、18倍以上にもなっています。
脳卒中もわが国三大死因の1つです。そしてこのうち虚血性心臓病と同じく欧米的食事が基因になる脳梗塞の死亡者は87153(同)で、昭和26年の3425人に比べればなんと!25倍の数字になっているのです。
ガンでもやはり目立つのは脂肪との関連が確かめられている大腸ガンや乳ガンの死亡者の増加。小腸のそれも含め腸のガンでの死亡者は昭和40年当時の6829人から35635人(同)と5倍以上に増えています。
乳ガンは昭和35年に1703人だった死亡者が8949人(同)に増えましたた。ガンの90%は食べものないしは体に入る化学物質によるといわれています(ワインダー博士など)。そこでガン死亡全体をみると昭和35年に10万人以下だったのが29万556人(同)と増えています。このうち昔からわが国に多い胃ガンの5万人(この数字は数十年間ほとんど変わらない)を差し引いて他のガンの総トータルだけ見ると、5万人が24万人に増えたことになります。
ガンの9割が食事や化学物質と関連ありとすれば、ごく大ざっばにいって約17万人(増えた19万人は、昭和35年以来の食事その他の変化が生み出したのだということになります。
そして食事の面だけ見ても食事との関連が具体的に確かめられている食道、肝臓、前立腺、膵臓などのガンの急増も目立っています。
肝硬変などは昭和35年に9078人だった死亡者が、平成11年では1万人を超えた程度ですが肝臓病による死亡者は増えています。
日本の肝臓病はウィルス性のものが多く、日本国特有です。しかし肝臓病の増加要因として、金持ち日本人はアルコール狂になったためだと見ていい要素も最近目立ってきています。
いまではこの病気そのものでは死ななくなったといわれる糖尿病でも、昭和35年に3000人台だった死亡者が40年に5000人台、45年に7000人台と増え、平成11年には1万2000人台となっています。糖尿病そのものでは死ななくなっている今日なので別の観点から見ると、糖尿病の急増ぶりは驚きです。
全国の病院、治療所のある1日を選んで毎年行なわれる患者調査という調査では、入院、外来合わせて昭和33年に394人だった糖尿病患者はその後20年余りの間に5倍に増えました。
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平成8年の人口から推定した初めての糖尿病実態調査は、予備軍まで含めた患者は約1400万人で成人の7人に1人という数字を明らかにしています。かつて糖尿病は相撲取りか特別の大金持ちしかかからない病気といわれていました。
昭和33年の数字は確かにそれを示していました。しかし予備軍を含めて推定1400万人という今日では糖尿病はもはや国民病です。
なお昭和60年頃から膵臓ガンの急増が警告されています。そして最近のNCIの研究では糖尿病が膵臓ガンになるプロセスが解明されたりしています。この研究のとおりとすれば、糖尿病が国民病になったわが国では、今後膵臓ガンももっと増えていくに違いありません。わが国における食事欧米化のもたらした影響は甚大です。